笑気吸入鎮静治療
歯科治療は歯を削るドリルの音や顔の近くでの麻酔の注射など、想像するだけでも怖いものです。この恐怖や不安から患者さんを解放させる方法として、確立されたものが、笑気吸入鎮静法です。笑気ガスは恐怖心や不安感という気持をやわらげることができます。
笑気吸入鎮静法の効果
吸入装置で30~35%程度の笑気ガスと70%の酸素を混合し、専用の鼻マスクで吸入させます。笑気の臭いは甘い香りで、違和感なく気持よく吸入できます。吸入された笑気ガスは、肺から血中に急速に溶け込み、5分以内に鎮静状態に達します。また、血中からの排泄も非常に速いので吸入を停止すれば、速やかに鎮静状態から回復します。治療終了後は、患者さんを長時間観察する必要もなく、数分で帰宅することができます。もちろん自転車や自動車の運転もできます。
笑気吸入鎮静法に対する実感
20~30%濃度の笑気ガスで口の周りのしびれや、遠くの方で音がするような感じがします。このころになると、ぼんやりした非常に心地よい楽しい気分になり、痛み感覚も鈍くなってきます。35%に濃度を上げると、体が温かく感じ、眠気がし、このあたりの濃度で歯の治療をしていきます。 |
どんな患者さんに適応ですか?
治療の内容がごく簡単なものでも、患者さんは不安感を持つものです。その意味からすると、どんな患者さんにも、どんな処置内容であっても適応と思われます。
なかでも、特に笑気吸入鎮静法が必要な症例は、次のようなときです。
①歯科治療に不安感、恐怖心、不快感を持っている患者さん
②歯科治療に非協力的な小児(全てが適用ではありません)
③ストレスに対する予備力の低い高齢者
④歯科治療中の神経性ショック、脳貧血様発作、疼痛性ショックがあった患者さん
⑤嘔吐反射の強い患者さん
吸入開始から終了まで
①鼻マスクを装着し、ガスが漏れないように適合させます。
②患者さんの状態を観察しながら笑気の濃度を徐々に上昇させます。
③5~10分位 吸入させると患者さんの表情が穏やかになり、術者の問いかけに対し、反応が鈍くなれば至適鎮静度です。そのころに治療を開始していきます。
治療の後は
①笑気の吸入を停止し空気を吸入させます。
②歩行にふらつきがないことを確かめ、帰宅させます。特に介助者は必要ありません。自転車や自動車の運転も可能です。